みなさん、こんにちは。院長の千々岩です。

前回は風邪に良く用いられる、「葛根湯」を構成する生薬についてお話しました。
今回は、葛根湯がなぜ風邪に効くのかについて解説しましょう。

よく誤解されるのですが、実は葛根湯は熱を下げる薬ではなくて、「発熱を助ける薬」なのです。

「カゼの時は熱を下げないと困るんじゃないの??」と思ってしまった方のために、まずは風邪をひくと熱が出るからだの仕組みについて、お話しておきましょう。

まず、風邪はほとんどの場合において、ウィルスが体内に侵入してくることで引き起こされます。

ウィルスは電子顕微鏡を使わないと確認できないほど、細菌に比べてそのサイズは小さく、生物の基本構造と言われる「細胞」を持っていません。そのくせ、生物の特徴の一つである「遺伝子」は持っているという矛盾から、「非細胞生物」とも呼ばれています。その基本構造はタンパク質の殻である「カプシド」と核酸(DNAまたはRNA)のみからなる極めてシンプルなものです。

 

そして、よく誤解されるところですが、細菌とは異なりウィルスには抗生剤は効きません!

風邪のひき始めからみだりに抗生剤を服用することは、効果がないばかりか、耐性菌(抗生剤が効かない細菌)を生み出したり、体内の善玉菌を不必要に殺してしまうことで、下痢膣カンジダ症などを引き起こす原因にも繋がるため、厳に慎むべきでしょう。

さて、ウィルスが体内に侵入した際、我々の体内の「自衛隊」とも言うべき白血球(これには好中球やマクロファージ、リンパ球など様々な種類の部隊がいます)が出撃して、ウィルスによる細胞乗っ取りを食い止めようとします。

この時、白血球同士が互いに連絡しあうための情報物質が「サイトカイン」と呼ばれるタンパク質です。

サイトカインには様々な種類があり、これらのやり取りを通して、白血球はさらなるパワーアップを果たしたり、増援を呼んだり、ウィルスや細菌に対するミサイル(抗体)産生を促します。

このサイトカインは、白血球だけでなく我々の脳にも、大事な命令を送ります。その最たるものが「発熱」です。

発熱は、風邪をひいている本人にとっては、とてもつらくてイヤな症状ですが、その反面、ウィルスや細菌に対する大事な「防衛反応」の役割を持っています。

ちなみに発熱のもつ意味には…

1:微生物(ウィルスや細菌)の増殖を阻止
2:リンパ球における抗体の産生能力を増強
3:白血球の遊走能(動き回る力)や貪食能(微生物を食べる力)の強化

などが挙げられます。

つまり発熱とは、ウィルスが引き起こしているものではなくて、我々のからだが能動的に起こしている生体反応であることを忘れてはいけません。

そのため、熱があるからといって、すぐ解熱剤を服用するのは、上記の発熱の有するメリットを邪魔する結果となり、結果、ウィルスがなかなか排除されず、かぜ症状が長引く原因になってしまうわけです(-_-;)。

一方、葛根湯を服用した場合、咳を鎮める作用、筋弛緩作用、頭痛を軽減させる作用と並行して、麻黄と桂枝といった生薬による相乗作用により、体内の熱産生能力が活性化されます。

この結果、体がウィルス排除のためにあらかじめセットしていたポイントまで体温が達すれば、寒気もとれて、それ以上の発熱はお役御免となります。そのしるしとなるのが、風邪が良くなる時に見られるスッキリした発汗です。

葛根湯を代表とする、「麻黄」が含まれるグループは、麻黄剤と呼ばれており、麻黄湯や小青竜湯といった方剤が存在します。インフルエンザや花粉症のときにお世話になった読者の方もおられるかもしれませんね。

最後に葛根湯を使用するときの注意をお教えしましょう。

まず、漢方エキス剤全般に言えることですが、しっかり効かせるためには、インスタントコーヒーやカップスープのように、100mlほどのお湯で溶かして、薬湯にして服用されて下さい。服用した後は、できるだけ外出を避け、布団をかぶって温かくして休んでいましょう。

ちなみに、発熱や頭痛といった症状以外に、肩やうなじが凝っていて、汗をかいていない状態が、葛根湯がヒットしやすい状態となります。

逆に、風邪のひき始めから汗がダラダラ出ている方や、胃腸が弱い方では、汗が止まらなくなったり、動悸、胃もたれなどの副作用が出やすいので、ご注意を!

実は葛根湯は、ドラッグストアで販売している漢方薬において、最も副作用情報が多いものの一つでもあるのです(;^_^A…。

しかし、正しく用いれば、これほど便利な薬もそうそうないので、果たして葛根湯を飲むべき風邪なのか、判断に迷われる場合は、当院受診の上、お気軽にご相談ください。

風邪は、漢方治療が優れた効果を示す、得意分野でもありますので(^^♪